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地震に強い家の形とは?倒壊を防ぐために知っておきたい間取りと設計ポイント
日本は地震の多い国です。
だからこそ、これから家を建てるなら「家族の命を守れる、地震に強い家にしたい」と願うのは、ごく自然な想いです。
でも、どうすればそんな家ができるのか、少し難しく感じていませんか?
実は、地震に強い家づくりには、必ず押さえておきたい大切な「基本」があります。
建物の形をシンプルにし、壁の配置バランスを整え、耐震等級3という確かな基準で設計する。
この3つ(形・間取り・設計)を正しく組み合わせることで、ご家族を守る強い家はしっかりと実現できます。
今回は、これから家づくりを始められるあなたが安心して計画を進められるように、地震に強い家の形を基本から解説します。
さらに、倒壊を防ぐために知っておきたい間取りの工夫や、設計段階で確認すべき重要なポイントまで、分かりやすくご紹介します。
【この記事のポイント】
・地震に強い家の基本は、力が均等に分散するシンプルな「四角い形」です。
・耐震性は「形」だけでなく、「間取り」の工夫(耐力壁の配置など)で大きく向上します。
・安心の証である「耐震等級3」や「構造計算」が、設計段階での重要な鍵となります。
・デザイン性の高い複雑な形でも、設計の工夫で耐震性との両立は十分に可能です。
目次
地震に強い家づくりの基礎知識。まずは「形」の基本原則から
地震に強い家を考えるとき、最も基本となるのが建物の「形」です。
なぜなら、地震の揺れという巨大なエネルギーを、建物全体でいかに上手に受け流し、分散させるかが重要になるからです。
ここでは、地震に強い形と、少し注意が必要な形について、その理由とともに見ていきましょう。
なぜ「シンプルな形」が地震に強い?
地震に強い家の形は、正方形や長方形のような、できるだけシンプルな四角形が基本となります。
その理由は、建物にかかる巨大な地震のエネルギーを、全体でバランス良く「分散」させやすい構造だからです。
具体的には、主に次の3つの利点が挙げられます。
建物全体で力を受け止める
床・天井・壁の6つの面が一体となり、地震の力を受け止め、分散させます。
ねじれが生じにくい
建物の「重心(重さの中心)」と「剛心(強さの中心)」の位置がずれにくいため、建物がねじれるような変形を防ぎます。
品質を確保しやすい
構造がシンプルなため施工がしやすく、設計通りの強度を出しやすいという側面もあります。
建築の専門用語では、建物を真上から見た形を「平面形状(へいめんけいじょう)」、横から見た形を「立面形状(りつめんけいじょう)」と呼びます。
少し難しそうな言葉ですが、平面形状は「間取り図の形(真上からの視点)」、立面形状は「外から見た建物の形(真横からの視点)」とイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
設計の打ち合わせで図面をご覧になるときは、ぜひこの2つの形に大きな凹凸がないか、一度チェックしてみてください。
この両方が、できるだけシンプルな四角形であることが、耐震性を高める上での理想とされています。
耐震性を考える上で注意したい「複雑な形」
一方で、L字型やコの字型、オーバーハング(1階より2階がせり出した形)など、デザイン性の高い複雑な形の場合は、地震の力が特定の部分に集中しやすい箇所が生まれることがあります。
だからこそ、設計段階でその特性を正確に把握し、耐力壁の追加や接合部の強化といった対策を計画的に盛り込むことが非常に重要になります。
また、1階に壁の少ない大きな駐車場(ビルトインガレージ)を設ける場合も、同様に構造的な補強が必要です。
言い換えれば、適切な設計と対策を行うことで、デザインの自由度と高い耐震性を両立させることは十分に可能なのです。
具体的にどのような工夫が必要になるかは、次の章で詳しく見ていきましょう。
関連記事:木造住宅の耐震性は大丈夫?鉄骨造住宅と比較した地震対策のポイント

倒壊リスクを減らす「間取り」の3つの工夫
建物の外側の「形」だけでなく、内部の「間取り」も耐震性に大きく影響します。
ご家族が快適に暮らすための間取りと、家を地震から守るための構造。この2つのバランスを考えることがとても大切です。
ここでは、倒壊リスクを減らすために知っておきたい間取りの工夫を3つご紹介します。
工夫1:家の強さを支える「耐力壁」をバランス良く配置する
間取りを考える上で最も重要なのが、「耐力壁(たいりょくへき)」の配置です。
耐力壁とは、地震や風などの横からの力に抵抗するために、筋交い(すじかい)を入れたり、構造用合板を張ったりして強化された、構造上とても重要な壁のことです。
なぜ、配置バランスが重要なのでしょうか?
壁の配置が偏っていると、建物の「重心(重さの中心)」と「剛心(強さの中心)」の位置がずれてしまいます。
この2つの位置がずれていると、地震の際に建物がねじれるような揺れ方をしてしまい、ダメージが大きくなる可能性があります。
どう配置すれば良いでしょうか?
ただ壁の量を満たすだけでなく、建物の四隅や内部にバランス良く配置することが、地震に強い家にするための鍵となります。
設計の際は、「家の四隅にしっかり壁は入っていますか?」「バランスは悪くないですか?」と確認してみると良いでしょう。
工夫2:開放的な「吹き抜け」や「大きな窓」は計画的に
リビングに大きな吹き抜けがあったり、壁一面の大きな窓があったり。
開放的で明るい空間は、とても魅力的ですよね。
しかし、地震対策の視点で見ると、少し注意が必要なポイントでもあります。
なぜ、注意が必要なのでしょうか?
耐震性の観点から見ると、吹き抜けや大きな窓は、床や壁が少なくなることを意味します。
床は地震の横揺れを建物全体に伝える「水平構面(すいへいこうめん)」という重要な役割を担っています。
吹き抜けでこの床がなくなると、地震の力をうまく伝えられなくなる可能性があるのです。
💡 家づくりミニ知識:水平構面(すいへいこうめん)とは?
地震に耐えるための「床や屋根の強さ」のことです。
段ボール箱は、蓋(ふた)をしっかり閉じた方が頑丈ですよね。
家も同じで、床があることで箱としての強度が保たれます。
どう対策すれば良いのでしょうか?
吹き抜けを設ける場合は、周りの梁(はり)を太くしたり、他の部分の耐力壁を増やしたりするなど、全体の構造バランスを計算した設計が不可欠です。
開放感を演出しつつ、どこに必要な壁を確保するか。
「吹き抜けを作ることで弱くなる部分は、どう補強されますか?」と、設計士に相談しながら最適なバランスを見つけていきましょう。
工夫3:1階と2階の柱や壁の位置をそろえる(直下率)
2階建て以上の家を建てる際に、ぜひ知っておきたいのが「直下率(ちょっかりつ)」という考え方です。
直下率とは何でしょうか?
これは、上階の柱や耐力壁の真下に、下階の柱や耐力壁がどのくらいの割合でそろっているかを示す指標のことです。
この直下率が高いほど、建物の重さや地震の力がスムーズに基礎へと伝わるため、構造的に有利になるケースが多いです。
もし、位置がそろわない場合は?
「1階は柱のない広々としたLDKにしたい」といったご要望のように、間取りによってはどうしても柱や壁の位置をそろえられない場合もあります。
大切なのは、そのような場合でも梁(はり)を太くして補強したり、詳細な構造計算を行ったりすることで、安全性は十分に確保できるということです。
「この間取りの場合、構造的に問題ないですか?」と、ぜひ設計士に確認してみてください。
設計の打ち合わせで使える!「わが家の耐震性」確認リスト
ここまでご紹介した「間取り」のポイントは、少し専門的だったかもしれません。
しかし、すべてを完璧に理解する必要はありません。
設計の打ち合わせの際に、以下のリストを使って「わが家の場合はどうなっていますか?」と質問していただくだけで、より安心して家づくりを進めることができます。
【そのまま聞ける! 設計士さんへの質問リスト】
□ 「この間取りでの、耐力壁(たいりょくへき)の配置図を見せていただけますか?」
(壁が偏っていないか、四隅にしっかり入っているか確認しましょう)
□ 「吹き抜けや大きな窓で弱くなる部分は、どうやって補強する計画ですか?」
(梁を太くする、近くの壁を増やすなどの対策を聞いてみましょう)
□ 「1階と2階の壁がずれている部分(直下率が低い所)は、構造的に大丈夫ですか?」
(問題ない理由や、具体的な補強方法を説明してもらいましょう)
関連記事:住みやすい家の特徴とは? 動線を考慮した間取りと押さえたいポイント

設計段階で必ず確認したい!安心を形にする3つの重要ポイント
家の形や間取りが決まったら、次はその計画を実際の「設計」に落とし込んでいきます。
この設計段階で、家の耐震性が最終的に決定されると言っても過言ではありません。
ここでは、専門的な内容も含まれますが、ご家族の安全のためにぜひ確認しておきたい重要なポイントを3つご紹介します。
ポイント1:「耐震等級3」の取得を基本に考える
「耐震等級」とは、地震に対する建物の強さを示す、国が定めた客観的な指標です。
等級は1から3まであり、数字が大きいほど耐震性が高くなります。
| 耐震等級 | 強さの目安 |
|---|---|
| 耐震等級1 | 建築基準法で定められた、最低限の耐震性能。震度6強~7の地震で、倒壊・崩壊しないレベル。 |
| 耐震等級2 | 耐震等級1の1.25倍の耐震性能。学校や病院など、公共の避難所に指定される建物の基準。 |
| 耐震等級3 | 耐震等級1の1.5倍の耐震性能。消防署や警察署など、防災の拠点となる建物の基準。 |
2016年に発生した熊本地震では、震度7の揺れが2度も観測されました。
この地震の調査(国土交通省の報告)によると、建築基準法レベルである耐震等級1の住宅には倒壊・大破したものがあった一方で、耐震等級3の住宅は大きな損傷が見られなかったと報告されています。
この事実からも、大きな地震がいつどこで起きてもおかしくない日本において、耐震等級3の取得はもはや特別なことではなく、ご家族の命と財産を守るためのスタンダードであると私たちは考えています。
💡 家づくりアドバイス
口頭で「耐震等級3です」と言われるだけでは、少し不安が残るかもしれません。
打ち合わせの際は、「耐震等級3の認定証は発行されますか?」や「計算書などの根拠は見せてもらえますか?」と確認してみましょう。
しっかりとした証明書があれば、将来の資産価値を守ることにもつながります。
ポイント2:建物を支える「地盤調査」は必須項目
どんなに頑丈な家を建てても、その家が乗っている地面、つまり「地盤」が弱ければ、地震の際に建物が傾いたり、沈んだりしてしまう「不同沈下(ふどうちんか)」のリスクがあります。
そのため、現在では家を建てる前に「地盤調査」を実施し、その土地の強さに応じた基礎の設計を行うことが、事実上の標準となっています。
これは、建物の安全性を確保するために、建築基準法などの法令で地盤の耐力に応じた基礎の仕様が定められているためです。
地盤調査の結果、もし地盤が弱いと判断された場合は、「地盤改良工事」を行って、建物を安全に支えられるように補強します。
地盤調査や改良工事には費用がかかりますが、これは家の安全性を根底から支える大切な投資です。
どのような調査を行い、どのような対策を講じるのか、事前にしっかりと説明を受けましょう。
ポイント3:安心の裏付けとなる「構造計算」の実施
家の耐震性を科学的に検証する方法として、「構造計算」があります。
これは、建物の重さや、地震・台風などでかかる様々な力を詳細に算出し、柱や梁(はり)などの部材がその力に耐えられるかを一つひとつ検証する、いわば「家の強度証明書」のようなものです。
木造2階建て住宅の計算方法には、簡易的な「壁量計算」と、より詳細な「許容応力度計算(きょようおうりょくどけいさん)」の2種類があります。
多くの住宅は壁量計算で設計されますが、「耐震等級3」を目指す場合や、吹き抜けやビルトインガレージといった複雑な要素を持つ家を建てる場合には、後者の詳細な構造計算を行うことが安全性を確保する上で重要です。
関連記事:耐震等級3相当とは?耐震等級3との違いを解説します!

Q&Aで解決!地震に強い家づくりのよくある疑問
最後に、お客様からよくいただくご質問に、一問一答形式でお答えします。
Q. シンプルな形以外の家は、地震に弱いのでしょうか?
A. いいえ、適切な設計と補強を行えば、デザイン性と耐震性の両立は十分に可能です。
たしかに基本はシンプルさが有利ですが、L字型やコの字型の家でも、弱点となりやすい部分を耐力壁や頑丈な梁(はり)で補強することで、高い耐震性を確保できます。
また、屋根を瓦などの重いものから、ガルバリウム鋼板のような軽い金属屋根に変えるだけでも、建物の重心が下がり、揺れにくくなる効果が期待できます。
信頼できる設計士と一緒に、デザインの希望と安全性を両立させる最適なプランを考えていきましょう。
Q. 吹き抜けがあると耐震性は弱くなりますか?
A. そのままでは弱くなる可能性がありますが、設計の工夫で強度は確保できます。
吹き抜けは床(水平構面)がなくなる分、建物の水平方向の強度が落ちやすくなります。
しかし、その分だけ周囲の梁を太くしたり、耐力壁を増やしたりしてバランスを整えることで、耐震等級3を取得することは十分に可能です。
「吹き抜け=危険」ではなく、「吹き抜けには適切な計算が必要」と覚えておいてください。
Q.「耐震」「制振」「免震」の違いと、それぞれの効果は何ですか?
A. 揺れに「耐える」のが耐震、「吸収する」のが制振、「伝えない」のが免震です。
これらは地震対策の3つの異なる考え方で、それぞれに特徴とコスト感が違います。
| 構造 | 考え方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 耐震 | 建物を頑丈にして、地震の力に耐える | 最も一般的でコストも比較的抑えられる。揺れは直接伝わる。 |
| 制振 | ダンパー等の装置で、揺れを吸収する | 繰り返しの揺れに強い。建物の損傷を軽減し、家具の転倒なども防ぐ。 |
| 免震 | 基礎と建物の間に装置を入れ、揺れを伝えない | 最も揺れを感じにくいが、コストが高く、導入できる土地に制約がある場合も。 |
多くの住宅では、まず基本となる「耐震」性能を耐震等級3まで高めた上で、より安心を求める方がオプションとして「制振」装置を組み合わせるケースが増えています。
ご自身の予算や、どこまでの安心を求めるかに合わせて検討するのが良いでしょう。
Q. 平屋と2階建て、地震に強いのはどちらですか?
A. 一般的には、高さが低く軽い「平屋」の方が揺れにくく有利です。
平屋は建物自体の重さが軽いため、地震の際に受ける揺れのエネルギーが小さくなります。
また、シンプルな四角い形にしやすいという点でも、耐震性を確保しやすいと言えるでしょう。
ただし、これはあくまで一般論です。
現代の建築技術では、2階建てや3階建てであっても、適切な設計を行えば、平屋と同等の極めて高い耐震性能を持たせることは十分に可能です。
関連記事:地震に強い家の特徴とは?耐震・制振・免震構造の違いもご紹介します

まとめ
今回は、地震に強い家の「形」をテーマに、倒壊を防ぐための「間取り」の工夫、そして「設計」の重要ポイントまでご紹介しました。
地震に強い家づくりとは、単に頑丈にするだけでなく、「形・間取り・設計」の3つをバランスよく整えることです。
シンプルな形を基本にしつつ、暮らしやすい間取りと、耐震等級3という確かな裏付けを持つ設計。
これらを総合的に満たすことが、ご家族の本当の安心につながります。
専門的なことが多く、不安に感じることもあるかもしれません。
だからこそ、一つひとつの疑問に寄り添い、確かな技術でサポートしてくれるパートナーを見つけることが大切です。
私たち大栄建設では、永く健康に暮らせることと安心・安全な家づくりを大切にしています。
「デザインと耐震性、両方こだわりたい」「この間取りで大丈夫?」など、少しでも気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
