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漆喰の壁は本当に健康にいい?メリット・デメリットを徹底解説
漆喰の壁は本当に健康にいい?後悔しないためのメリット・デメリットと費用を徹底解説
近年、ご家族の健康を第一に考えた家づくりが注目を集めています。
住宅用の建材には化学物質が含まれていることが多く、これがアレルギーやアトピー、シックハウス症候群などの原因となることから、自然素材を用いたお住まいへの関心が高まっているのです。
その中でも、小さなお子様やアレルギー体質の方がいらっしゃるご家庭では、化学物質を含まない安心・安全な壁材として「漆喰(しっくい)」が選ばれるケースが増えています。
そこで今回は、漆喰がなぜ健康に良いとされているのか、その効果や特徴を踏まえながら、メリットとデメリットをわかりやすく解説していきます。
【この記事でわかること】
●漆喰が持つ「調湿」「消臭」「抗菌」などの健康効果
●アレルギーやシックハウス症候群に有効な理由
●ビニールクロスとの決定的な違い
●知っておくべき費用やひび割れなどのデメリットと対策
目次
漆喰とは?自然素材の塗り壁材としての魅力
漆喰とは、消石灰(水酸化カルシウム)を主成分とする自然素材の塗り壁材です。
消石灰は、サンゴ礁がルーツの石灰石を焼いて作られる天然由来の成分。
これに、壁に塗りやすくするための「のり(海藻など)」や、強度を保つための「すさ(麻などの繊維)」を混ぜて作られます。
▲漆喰と珪藻土の違いとは?
漆喰とよく比較される自然素材の塗り壁材に「珪藻土(けいそうど)」があります。
どちらを選ぶべきか迷われる方も多いため、その違いを明確にしておきましょう。
珪藻土は、植物性プランクトンの化石から作られる素材です。
漆喰と珪藻土では、得意な機能や仕上がりの質感が異なります。
特徴 | 漆喰 | 珪藻土 |
調湿性 | ◯(穏やかに吸放湿) | ◎(非常に高い製品が多い) |
消臭性 | ◎(アルカリ性で臭いを分解) | ◯(微細な孔で臭いを吸着) |
抗菌・抗ウイルス性 | ◎(強アルカリ性でカビに強い) | △(製品による※) |
固まる性質 | ◯(自ら固まる性質を持つ) | △(固化材が必要) |
仕上がりの質感 | つるっとした滑らかな仕上げが得意 | ざらっとした質感が得意 |
耐久性・メンテナンス性 | ◎(非常に高く、汚れも削りやすい) | ◯(表面が削れやすく、もろい) |
※珪藻土自体に抗菌性はなく、漆喰(消石灰)などを混ぜて機能を付加している製品があります。 |
職人の手によってコテで塗られる漆喰は、つるりとした表面が特徴で、和風のお部屋はもちろん、洋風のお家にもよく合います。
仕上げ方によって、オリジナルな風合いや模様を楽しむこともでき、唯一無二の内装デザインが可能です。
職人の技が光る、多様なデザイン性と仕上げ
漆喰の大きな魅力の一つは、職人の手仕事によって生まれる、表情豊かなデザイン性です。
単一の「つるりとした表面」だけでなく、コテの動かし方や道具の使い分けによって、無限の表情を生み出すことができます。
コテ押さえ:コテで表面を平滑に押さえた、最もベーシックでミニマルな仕上げ。光が当たると陰影が美しく、素材そのものの質感が際立ちます。
扇(おうぎ)仕上げ:コテを扇状に動かしながら模様をつける仕上げ。柔らかな曲線が特徴で、和風・洋風問わず様々な空間に馴染み、動きのある壁面を演出します。
ウェーブ仕上げ:コテで波打つような凹凸をつける仕上げ。光の当たり方で表情が変わり、空間に奥行きと温かみを与えます。
ラフ仕上げ:あえて粗めに仕上げ、漆喰本来の力強い素材感を前面に出す方法。アンティークやインダストリアルな空間にマッチします。
ブラシ引き:ブラシを使って独特のテクスチャーをつける仕上げ。繊細で柔らかな印象を与え、ナチュラルな空間によく合います。
これらの仕上げ方は、熟練の職人の技術によって一つ一つ手作業で施されるため、全く同じ模様は二つとありません。
まさに「唯一無二」のオリジナルな空間を創り出すことが可能となり、お住まいの個性を際立たせることができます。
漆喰が選ばれる理由と活用シーン
漆喰は、近年のナチュラル志向や健康志向の高まりとともに注目されており、自然素材を取り入れたいと考えるご家庭から支持されています。
注文住宅やリノベーションはもちろん、DIYリフォームで漆喰を使う方も増えてきました。
また、リビングや寝室、子ども部屋、トイレなど、お部屋の用途に応じて使い分けることで、それぞれの空間に合った空気環境を整えることができます。
特に寝室では調湿性と消臭性の効果が発揮されやすく、快眠をサポートしてくれる素材としても重宝されています。
漆喰のメリット①:室内の空気を整える「調湿」と「消臭」効果
漆喰の壁は「呼吸する壁」とも言われ、室内の湿度を快適に保つ「調湿性」と、気になる生活臭を分解する「消臭効果」を兼ね備えています。
これらは、漆喰が持つ無数の小さな孔(あな)と、主成分である消石灰の化学的な性質によるものです。
結露やカビを抑える自然な調湿機能
漆喰の表面には、目に見えない無数の微細な孔が空いています。
多孔質な構造がスポンジのように機能し、湿気が多い日には余分な水分を吸収し、逆に空気が乾燥している日には蓄えた水分を放出します。
この「調湿性」により、室内の湿度は常に快適な40~60%程度に保たれやすくなります。
そのため、梅雨時のジメジメ感や冬の過乾燥を防ぐだけでなく、アレルギーの原因ともなる結露やカビの発生を抑制する効果も期待できます。
生活臭を元から分解する消臭効果
漆喰の消臭効果は、単に臭いを吸着するだけではありません。
主成分である消石灰の強アルカリ性が、臭いの原因物質を化学的に吸着・分解します。
例えば、ゴミの生乾き臭、トイレのアンモニア臭、ペットの臭い、タバコの臭いといった酸性の性質を持つ生活臭は、アルカリ性の漆喰によって中和され、無臭の物質に変化します。
そのため、芳香剤のように他の香りでごまかすのではなく、臭いを元からなくし、お部屋の空気をクリーンに保つことができるのです。
漆喰のメリット②:アレルギーやシックハウス対策にも有効
近年の住宅で問題視されるシックハウス症候群やアレルギー。
その原因の一つである化学物質(VOC)を一切含まない漆喰は、ご家族の健康を守る上で非常に有効な選択肢です。
加えて、空気中の有害物質を吸着し、分解する働きも持っています。
化学物質を含まない安心感
一般的なビニールクロスには、接着剤や可塑剤、顔料などから揮発するトルエン、キシレン、ホルムアルデヒドといった化学物質(VOC:揮発性有機化合物)が含まれていることが多く、これらがシックハウス症候群やアレルギー、アトピー性皮膚炎などの健康問題の原因となることがあります。
一方、漆喰の主成分である消石灰は、サンゴや貝殻といった天然の石灰石を焼成・加工して得られる自然素材です。
そのため、漆喰は製造過程においても、そして施工後も、ホルムアルデヒドをはじめとする有害な化学物質を一切含みません。
さらに、JIS規格において最高等級のF☆☆☆☆(フォースター)認定を受けている漆喰製品を選べば、より安心して使用できます。
有害物質を分解するメカニズム
漆喰が健康に良いとされる大きな理由の一つは、その「吸着・分解作用」にあります。
漆喰の主成分である消石灰は、空気中の二酸化炭素を取り込みながらゆっくりと石灰石に戻っていく「炭酸カルシウム化」という特性を持っています。
この過程で、漆喰が持つ多孔質の構造が空気中の微細な有害物質(VOCなど)を吸着し、さらに強アルカリ性の性質がそれらを分解することで、室内の空気環境を浄化する働きをします。
建材から発生する化学物質によるアレルギーやシックハウス症候群のリスクを低減し、ご家族が深呼吸できる安心な空間となります。
小さなお子様がいるご家庭でも安心
漆喰の表面は静電気を帯びにくく、ほこりやダニの繁殖を抑制します。
アレルギーをお持ちのお子様や、敏感な体質の方にとっては、日常のお部屋がより安全で過ごしやすい空間になります。
関連記事:住宅の空気質を向上させるために知っておきたいVOCの影響と対策
漆喰のメリット③:ウイルス・カビに強い抗菌性
漆喰の主成分である消石灰は、pH12以上という強いアルカリ性の性質を持ちます。
この環境は細菌やウイルスにとって非常に過酷であるため、壁に付着したカビやウイルスの増殖を抑制し、不活化させる効果が期待できます。
強アルカリ性による除菌・抗ウイルス効果
漆喰は、pH値が12以上の強アルカリ性という非常に高いアルカリ性を示します。
この強いアルカリ環境が、空気中に浮遊する細菌(例:大腸菌、黄色ブドウ球菌など)やカビ、そしてエンベロープウイルス(例:インフルエンザウイルス、一部のコロナウイルスなど)に対して、増殖を抑制したり、不活性化する効果を発揮します。
この効果については、複数の学術機関や業界団体によってその有効性が示唆されています。
長崎大学の研究では、漆喰の主成分である消石灰が新型コロナウイルスを不活化させる効果が公式に報告されています
出典:長崎大学「石灰・漆喰の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)不活化効果を確認」
住まいの空気環境を健やかに保つ
抗菌性に優れているため、漆喰の壁は空気を清潔に保つ効果があり、ご家族の健康をサポートしてくれます。
特に感染症への意識が高まる今、注目すべき特長と言えるでしょう。
関連記事:カビが生えない家の条件とは?家族の健康を守るために必要な3つの基本対策
漆喰のメリット④:長寿命で経年劣化しにくい
お城にも使われた高耐久素材
日本の伝統建築であるお城や蔵にも漆喰が使われてきたように、漆喰はとても耐久性のある素材です。
適切なメンテナンスを行えば、100年以上美しさを保つことができると言われています。
ビニールクロスとの違い
ビニールクロスは10年程度で黄ばみや剥がれが起きることが多く、定期的な貼り替えが必要です。
漆喰であれば、塗り直しや部分補修を行うことで長く使用し続けることができ、結果的にコストパフォーマンスが良くなることもあります。
漆喰のデメリットと注意点
① 施工費用と手間がかかる【費用相場も解説】
漆喰は「下地処理」→「下塗り」→「仕上げ塗り」など複数工程が必要で、専門的な左官技術が求められます。
そのため、一般的なビニールクロスに比べて施工費用が高くなる傾向があります。
ビニールクロス: 1㎡あたり 約1,000円~2,000円
漆喰(材料・施工費込み): 1㎡あたり 約4,000円~10,000円
上記はあくまで目安であり、施工面積や仕上げ方によって費用は変動します。
しかし、ビニールクロスが約10年で貼り替えが必要になるのに対し、漆喰は100年以上持つと言われる耐久性があります。
初期費用は高くても、長期的に見ればメンテナンス費用を抑えられ、コストパフォーマンスが高くなるケースも少なくありません。
② ひび割れ(クラック)のリスク
漆喰は硬化後に伸縮性があまりないため、建物の揺れや下地の動きによって、表面に細いひび割れ(ヘアークラック)が発生することがあります。
これは左官材の特性であり、完全に防ぐことは難しい側面もありますが、以下のような対策でリスクを低減できます。
対策: 経験豊富な職人による丁寧な下地処理や、メッシュシート(ひび割れ防止シート)を下地に伏せ込む工法を選ぶ。
補修: 万が一ひびが入った場合でも、DIY用の補修材で比較的簡単に目立たなくすることが可能です。
③ 施工直後の独特な匂い
漆喰は自然素材ですが、施工直後には主成分である石灰や、つなぎとして使われる海藻のりなどの匂いをわずかに感じることがあります。
これは化学物質の匂いとは異なり、人体に有害なものではありません。
匂いの感じ方には個人差がありますが、通常は適切な換気を行えば数日~数週間で自然と薄れていきます。
【知っておくと安心】漆喰壁のメンテナンスと補修方法
「漆喰は汚れたらどうするの?」と心配される方も多いですが、日常的なメンテナンスは意外と簡単です。
正しい方法を知っておけば、長く美しい状態を保てます。
軽い汚れ(手垢・黒ずみ):消しゴムで優しくこすると、表面の汚れだけを落とすことができます。プラスチック消しゴムがおすすめです。
落ちにくい汚れ(コーヒーのシミなど):サンドペーパー(紙やすり)の細かいもので、汚れた部分の表面を薄く削り取ります。削った部分と周りの色の差が気になる場合は、霧吹きで水を軽く吹きかけると馴染みやすくなります。
小さなひび割れ(ヘアークラック):ホームセンターなどで購入できる漆喰補修キットを使えば、DIYでも簡単に補修できます。ひび割れに充填し、指やヘラで周りと馴染ませるだけです。
【メンテナンスの注意点】
化学雑巾や洗剤を使うと、化学成分が漆喰と反応してシミや変色の原因になるため使用は避けてください。
また、強くこすりすぎると壁が削れてしまうので、あくまで優しくお手入れすることがポイントです。
まとめ
今回は、漆喰を壁材として取り入れることのメリット・デメリットについて解説しました。
自然素材である漆喰には、調湿・消臭・抗菌・抗ウイルスなどの優れた効果があり、アレルギーやシックハウスに配慮したお家づくりにおすすめです。
加えて、デザイン性と高い耐久性も兼ね備えており、ご家族が長く安心して暮らせる空間を叶えてくれる素材です。
一方で、施工には専門的な技術が必要で、コストや施工時間がかかるといった注意点もあります。
健康的で心地よいお家づくりを検討されている方は、ぜひ漆喰の壁を選択肢のひとつとしてご検討ください。