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2025.08.21
スタッフブログ
構造・安全性

国産材を使ったお家って実際どうなの?メリットとデメリットから見る素材選びの基礎知識

国産材を使ったお家って実際どうなの?メリットとデメリットから見る素材選びの基礎知識

国産材を使って家を建てたいけれど、「価格が高いのでは?」「どんな木があるのかよく分からない」といった不安を感じていませんか?
木のぬくもりを感じられる自然素材の家は、暮らしに快適さと安心感をもたらしますが、その素材選びには正しい知識が欠かせません。
今回は、国産材を家づくりに使うメリット・デメリットを丁寧に解説し、これから家づくりを検討するあなたの判断材料となるポイントをまとめました。
快適で長く愛せる家づくりの参考にしてください。

 

【この記事でわかること】
・国産材を使った家の具体的なメリット(性能、環境貢献、心地よさ)
・知っておくべきデメリットと、その考え方や対策
・杉や檜など、代表的な国産材の特徴と選び方のコツ
・補助金などを活用してお得に家を建てるヒント
・後悔しないための施工会社選びの重要性

国産材とは?基本知識と国内の森林事情

国産材の定義と主な種類

国産材とは、その名の通り日本国内で育ち、伐採された木材のことです。
代表的な樹種には杉、檜(ヒノキ)、松、栗などがあり、それぞれに特性や風合いが異なります。
また、地域によっては「吉野杉」や「天竜檜」といったブランド材も流通しており、建築用途やインテリア材として豊富な選択肢があります。

 

杉(すぎ):加工しやすく軽量で、柱や梁などの構造材に広く使われます。
檜(ひのき): 特有の香りと高い耐久性を持ち、土台や浴室まわりなど湿気の多い場所に適しています。

 

それぞれの特性を知ることが、目的に合った素材選びの第一歩です。

日本は森林大国。自給率の現状と課題

日本の国土の約3分の2(67%)は森林で、世界有数の森林率を誇る国です(出典:林野庁)。
しかし、長年、安価な輸入材への依存が続いたことで国内林業は衰退し、木材自給率は大きく落ち込んでいました。

近年、国産材の価値が見直され、その活用が推進された結果、2023年度の木材自給率は43.0%まで回復しました(出典:林野庁)。
これは実に48年ぶりの高水準で、国産材の利用は、日本の林業再生と森林保全、ひいては地域社会の活性化につながる重要な取り組みです。

国産材利用が注目される背景

環境問題や持続可能性(サステナビリティ)が重視される現代において、「地産地消」や「再生可能資源の活用」という考え方が広がっています。
国産材は、輸送エネルギーを抑えられる低炭素な素材であり、伐採後に植林することで循環利用できる再生可能資源です。
こうした背景から、環境に配慮したお家づくりを目指す人々の間で、国産材へのニーズが高まっています。

関連情報:国産材と輸入材はどう違う?比較してご紹介します! 

 

手入れの行き届いた日本の杉林

国産材を使うメリット①:気候・風土に合った性能

日本の四季に適応した「調湿性」と「断熱性」

日本は、梅雨の湿気や冬の乾燥など、一年を通して気候が大きく変動します。
国産材は日本の厳しい自然環境で育ったため、室内の湿度を快適に保つ優れた「調湿性」を備えています。
木が呼吸するように湿気を吸ったり吐いたりすることで、結露の発生を抑え、一年中快適な室内環境を保ちます。
また、木材は熱を伝えにくい性質を持つため断熱性が高く、冷暖房の効率を向上させ、省エネ効果も期待できます。
天然素材ならではの経年変化も魅力で、時を重ねるごとに風合いが増していくことも国産材のお家ならではの楽しみです。

古民家が証明する「耐久性」

日本各地に現存する築100年以上の古民家や歴史的建造物の多くは、国産材で建てられています。
適切に乾燥・加工された檜や杉は非常に耐久性が高く、世代を超えて住み継ぐことが可能です。
現代の住宅においても、この伝統的な知恵と素材の良さは活かされており、定期的なメンテナンスを行うことで、長く安心して暮らせるお住まいを実現します。

関連情報:一年中快適な家を建てるには?夏涼しく冬暖かい住まいのつくり方と工夫

 

雨の日の窓辺。国産の檜を使った窓枠が、快適な室内環境を思わせる。

国産材を使うメリット②:環境・社会への貢献

森林保全と地域経済の活性化

国産材を使うことは、日本の森林を適切に管理し、守ること(森林保全)に直結します。
木を伐採して利用し、その場所に新しい木を植えるというサイクルは、森林の若返りや生物多様性の維持に不可欠です。
また、木材の伐採から加工、流通までを地域で行うことで、地元に雇用が生まれ、林業や製材業といった地域産業が元気になります。
国産材を選ぶという選択が、持続可能な社会づくりに貢献するのです。

CO₂削減と省エネへの貢献

国産材は、海外から船で長距離輸送される輸入材に比べて、輸送時に排出されるCO₂(二酸化炭素)を大幅に削減できます。
また、木材は成長過程でCO₂を吸収し、炭素として内部に貯蔵する性質を持っています。
木材として利用されている間、その炭素は固定され続けるため、「第二の森林」として地球温暖化の防止に貢献します。
これらの点から、国産材は環境配慮型のお家づくりに最適な素材と言えるでしょう。

関連情報:ZEH(ゼッチ)とは?省エネ住宅でエコで快適な暮らし

 

若い林業従事者が、日本の森に苗木を植えている様子。森林の循環を象徴する一枚。

国産材を使うメリット③:木の香りと安心感

木の香りによるリラックス効果

檜や杉などの国産材が放つ特有の香りには、「フィトンチッド」という成分が含まれています。
この成分には、森林浴と同じようなリラックス効果があるとされ、心身の緊張を和らげ、ストレスを軽減する作用が期待されています。
木の香りに包まれた空間は、質の高い睡眠や集中力の向上にもつながり、お子さまのいるご家庭や在宅ワーク中心の方にも嬉しい効果をもたらします。

天然成分がもたらす防虫・防腐効果

国産の木材、特に檜にはシロアリなどの害虫を寄せ付けにくい天然の防虫・防腐成分が含まれています。
化学的な薬剤に頼らずとも、木材そのものが持つ力で一定の耐久性と安全性を保てるため、小さなお子さまやペットのいるご家庭でも安心して選べる素材です。

関連情報:住宅の空気質を向上させるために知っておきたいVOCの影響と対策

 

床と天井に国産杉を使ったモダンな寝室で、木の香りを楽しみリラックスしている女性。

国産材を使うメリット④:流通の安定性と品質

輸送リスクが低く、品質が安定

輸入材は長距離の海上輸送で運ばれるため、その過程で温度や湿度の変化による反りやひび割れといったダメージを受けるリスクがあります。
一方、国産材は生産地から建設現場までの距離が短いため、輸送中の劣化リスクが低く、高い品質を保ったまま手元に届きやすいというメリットがあります。

国内情勢に左右されにくい安定供給

世界情勢の不安や輸送網の混乱は、輸入材の価格高騰や納期遅延(ウッドショックなど)のリスクに直結します。
国産材は国内の流通で完結するため、比較的安定した供給が見込めます。
長期にわたるお家づくりの計画において、スケジュールが立てやすい点も大きな魅力です。

 

日本の材木置き場で、ベテランの職人が出荷前の国産材の品質を真剣な表情でチェックしている様子

国産材のデメリットと注意点

輸入材に比べて価格が高くなる傾向

国産材は、人の手で丁寧に育てられ、伐採から乾燥、加工に至るまで手間ひまがかかるため、安価な輸入材と比較して価格が高くなる傾向があります。
特に、有名なブランド材や希少な樹種は高価になりがちです。
ただし、これは初期費用での比較です。
国産材の持つ高い耐久性や、後々のメンテナンスコストまで含めた「ライフサイクルコスト」で考えると、必ずしも「高い買い物」とは言い切れない場合も多くあります。

樹種によっては加工に高い技術が必要

国産材は天然素材であるため、一つとして同じものはありません。
節や木目の特徴、反りやねじれといった「木のクセ」を理解し、それを活かすには、職人の高い技術と経験が求められます。
施工業者によって仕上がりの品質に差が出ることがあるため、国産材の扱いに慣れた、信頼できる建築会社を選ぶことが極めて重要です。

樹種やサイズに限りがある場合も

家づくりで使う木材には、柱や梁など大きなサイズが求められるものがあります。
しかし、国産材では、希望の樹種で必要な大きさの木材(大径木)を確保することが難しい場合があります。
設計の早い段階から、使用できる木材のサイズや量を工務店と相談し、計画に反映させていくことが大切です。

関連情報:ライフサイクルコスト(LCC)を考えた住宅とは?重要性と低減方法と資産価値の維持・向上

 

建築家と施主が、国産材のサンプルを見ながら真剣に家の打ち合わせをしている。

国産材を選ぶ際のポイントと活用のコツ

【比較表】用途に応じた樹種選びが重要

国産材と一口に言っても、その特性は様々です。
家のどこに、どんな目的で使うのかを明確にして樹種を選びましょう。

樹種 主な特徴 適した用途
杉 (すぎ) 軽量で加工しやすい。柔らかく、足腰への負担が少ない。調湿性が高い。 構造材(柱、梁)、床材、壁材
檜 (ひのき) 特有の芳香。高い耐久性と防虫・防腐効果。水に強い。 土台、柱、浴室、内装材
松 (まつ) 硬く、梁などに使うと重さに耐えられる強度を持つ。美しい木目。 構造材(梁)、床材、内装材
栗 (くり) 硬く、耐久性・耐水性が非常に高い。木目がはっきりしていて美しい。 土台、ウッドデッキ、家具材

 

見た目や香りの好みだけでなく、それぞれの木の性能を理解して適材適所で活用することが、快適な家づくりの基本です。

「地域材」や「認証材」で補助金を活用

お住まいの地域で伐採された「地域材」や、適切に管理された森林から産出されたことを証明する「認証木材」などを活用すると、国や自治体の補助金制度の対象となる場合があります。
例えば、「地域型住宅グリーン化事業」などの制度がありますので、お住まいの自治体の窓口や、依頼する建築会社に相談してみましょう。
地域材を使うことは、その土地の気候風土に最も適したお家づくりにもつながります。

成功の鍵は、信頼できる施工会社との出会い

国産材の魅力を最大限に引き出すには、木の特性を熟知し、それを活かす技術力を持った施工会社との出会いが不可欠です。
これまでの施工実績を見せてもらったり、木材へのこだわりについて話を聞いたりして、心から信頼できるパートナーを選びましょう。

関連情報:無垢材を使った家づくり!無垢材の特徴とおすすめの木材について 

 

日本の大工が、檜の梁に鑿(のみ)を使って精密なほぞ穴を加工している手元のクローズアップ。

まとめ

今回は、国産材を使ったお家づくりのメリットとデメリットを解説しました。
国産材は、日本の気候風土に最適な性能を持ち、住む人の心と身体に安らぎを与えてくれる素晴らしい素材です。
また、環境や社会に貢献できるという価値もあります。
もちろん、価格や供給面での課題もありますが、それらを理解した上で、ご自身の価値観やライフスタイルに合った選択をすることが大切です。
あなたが後悔しない、そして長く愛着を持って暮らせるお家づくりの一助となれば幸いです。