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2025.12.17
スタッフブログ
デザイン・設計

スリット窓にカーテンは必要?最適な幅と採光・プライバシー・デザイン性を最大化する設計ポイント

スリット窓にカーテンは必要?最適な幅と採光・プライバシー・デザイン性を最大化する設計ポイント

家づくりで人気の「スリット窓」。
その美しい佇まいに心を惹かれる一方で、「カーテンは必要?」「外からの視線は大丈夫?」といった疑問も尽きません。
結論から言うと、スリット窓は設置場所とガラスの種類を選べば、カーテン無しでもプライバシーを守りつつ、豊かな光を採り入れることが可能です。
家づくりは、デザインの理想と、日々の暮らしやすさという現実的な視点の両立が求められる、大切なプロセスです。
今回は、スリット窓が持つ本来の魅力から、計画段階で押さえておきたい重要な設計ポイントまで一つひとつ丁寧に解説します。
皆様の家づくりにおける、最適な選択のヒントを見つける一助となれば幸いです。

 

【この記事のポイント】

・設置場所や目的によって変わる、スリット窓のカーテン等の必要性
・採光・プライバシー・デザイン性を両立する最適な「窓の幅」と「配置」の考え方
・カーテン以外で、すっきりとした印象を保つ目隠しの方法とその特徴
・スリット窓を検討する上で知っておきたい、断熱性や防犯性に関する知識

そもそもスリット窓とは?住まいに採り入れる3つのメリット

まずは、スリット窓がどのような窓で、暮らしにどんなメリットをもたらしてくれるのか、その基本的な部分から確認していきましょう。
デザイン性だけでなく、実用的な利点も多くあります。

スリット窓の基本的な知識

お家の内外観に印象的なアクセントを加える「スリット窓」。
スリット(slit)とは「細長い切り込み」を意味し、その名の通り、縦や横に細長い形状が特徴のデザイン窓です。
開閉できない「FIX窓(フィックスまど)」と呼ばれる、はめ殺しタイプの窓がデザイン性を重視する際によく用いられます。
ほかにも、縦や横を軸にして外側にすべり出すように開く「すべり出し窓」のタイプもあり、用途に応じて選ぶことができます。

メリット1:空間を演出する高い「デザイン性」

スリット窓の最大の特長は、やはりその優れたデザイン性にあります。
壁面にリズミカルに配置することで、それ自体が空間のおしゃれなアクセントとして機能するのです。
例えば、

・同じ幅の窓を3本等間隔に並べると、安定感のある品格が生まれます。
・長さを変えて遊び心を加えると、リズミカルで楽しい表情になります。

 

このような工夫一つで、のっぺりしがちな壁面に豊かな表情が生まれ、洗練された空間を創り出すことができます。
建物全体の外観も、シャープで現代的な印象に仕上がります。

メリット2:プライバシーを確保しながらの「採光」

大きな窓はたくさんの光を取り込めますが、場所によっては外からの視線が気になることも。
その点、スリット窓はプライバシーを確保しながら、安定した光を室内に供給できるのが大きな利点です。
道路に面した玄関や、お隣さんとの距離が近い壁面など、プライバシーに配慮したい場所での採光計画に非常に有効です。
必要な場所に、必要な分だけ光を届ける。そんな賢い採光計画を可能にしてくれます。

メリット3:壁面を有効活用できる「省スペース性」

幅が狭いため、大きな窓の設置が難しい壁面や、テレビやソファなどの家具を配置したい壁にも、採光窓として設置が可能です。
階段の踊り場や廊下、ウォークインクローゼットの中など、限られたスペースを有効に活用できるのも大きなメリットと言えるでしょう。
「この壁は構造上、大きな窓はつけられない」という場合でも、スリット窓なら設置できるケースも多く、設計の自由度を高めてくれます。

関連記事:注文住宅は外観が重要!おしゃれな色選びのポイント

 

玄関横にスリット窓を配置したおしゃれなモダン住宅の外観デザイン

スリット窓にカーテンは必要?場所と目的で考えることが大切です

ここからは、「スリット窓とカーテン」の関係について掘り下げていきます。
すべての窓にカーテンが必要なわけではありません。
設置場所や目的を明確にすることが、最適な答えを見つける近道です。

カーテン等を設置する「目的」の明確化が最初のステップ

スリット窓にカーテンやロールスクリーンを取り付けたいと感じる背景には、きっと様々な思いがあるはずです。
例えば、日々の暮らしの中で、こんなお悩みやご希望はありませんか?

プライバシーの確保:

「お隣さんや道路からの視線を気にせず、リビングでゆったりとリラックスして過ごしたい」

日差しの調整:

「夏の強い西日を和らげて室内を快適に保ちたい」「大切な家具や床が日焼けするのを防ぎたい」

インテリアとしての装飾:

「少し寂しく感じる壁面のアクセントとして、窓辺をおしゃれに彩り、空間の質を高めたい」

このように、ご自身の暮らしの中で何を一番大切にしたいかを考えることが、最初の重要なステップです。
プライバシーが最優先なら「目隠し性能」を、日差し対策なら「遮光・遮熱性能」を、といった具合に、この後の製品選びで重視すべきポイントがぐっと絞りやすくなります。

場所別のカーテン等の必要性と最適な選択肢

玄関・廊下・階段:

基本的には不要なケースが多いです。
これらの場所は、外からの視線が直接届きにくく、明るさを優先したい空間です。
どうしても気になる場合は、設計段階で「型板ガラス(かたいたがらす)」と呼ばれる、表面が凸凹した不透明なガラスを採用すれば、カーテンなしでもプライバシーを確保できます。

リビング:

夜間のプライバシー保護や、西日対策として必要になる場合があります。
日中は開放的に過ごし、夜間だけ視線を遮りたい、というケースが多いでしょう。
その場合、一般的なカーテンよりも、日中は上部にすっきりと巻き上げておける「ロールスクリーン」や、光の量を調整できる「ブラインド」がおすすめです。
窓のデザイン性を損なうことなく、必要な時だけ機能させることができます。

寝室・子ども部屋:

プライバシーの確保と、安眠のための遮光性が重要視されます。
特に寝室では、朝日が眩しくて目が覚めてしまう、といったことを避けるためにも、遮光等級の高いロールスクリーンなどが適しています。

和室:

和紙のような質感を持つ「プリーツスクリーン」が非常によく調和します。
空間の落ち着いた雰囲気を壊さずに、障子のような柔らかな光を採り入れながら、視線を遮ることが可能です。

カーテン以外の選択肢も有効です

スリット窓のシャープな意匠を活かすには、カーテンレールが不要で窓枠内にすっきりと収まる製品が推奨されます。

ロールスクリーン:

シンプルな形状で操作も容易。遮光、遮熱、防炎など機能性のある生地も豊富です。

ブラインド:

羽(スラット)の角度調整により、視線を遮りながら採光や通風量を細かく制御できます。

プリーツスクリーン:

蛇腹状に折りたたまれたスクリーン。和洋問わず空間になじみやすく、上下に開閉できるタイプもあります。

窓用フィルム:

既存の透明ガラスに後から貼ることも可能。目隠し効果のある「すりガラス調フィルム」や、UVカット、断熱補助の効果が期待できる製品もあります。

関連記事:外から見えない間取りとは?プライバシーに配慮した家づくり

 

寝室のスリット窓に設置されたロールスクリーンとプライバシーを守る目隠しの様子

後悔しない設計ポイント|最適な「幅」と「配置」で理想の暮らしを

スリット窓の魅力を最大限に引き出すには、設計段階での計画が非常に重要です。
ここでは、特に後悔につながりやすい「採光」「プライバシー」「デザイン」の3つの観点から、窓の幅や配置を決める際の、心地よい暮らしに繋がるポイントを解説します。

【採光】最適な「幅の目安」と光を届ける「配置」のコツ

最適な「幅」の目安

多くの設計で採用されているのが、幅15cm~30cmのものです。
特に幅15cm~20cm程度のものを複数本リズミカルに並べると、スリット窓特有のシャープな印象を保ちながら、室内に十分な明るさを確保できるため、人気の高い手法です。
実際にどのくらいの光が入るかは、お家の向きや周辺環境によっても変わります。
そのため、設計段階で模型やCGによる照度シミュレーションを行い、光の入り方を一緒に確認しながら決めていくのが、後悔しないための最も確実な方法です。

光を奥まで届ける「配置」のコツ

壁の高い位置に横長のスリット窓を設ける「ハイサイドライト」という手法があります。
高い位置から入った光は、白い天井を伝って部屋の奥まで優しく拡散します。
これにより、一日を通して安定した明るさが保たれ、日中は照明をつけなくても心地よく過ごせる、穏やかな空間になります。

【プライバシー】視線を遮る「高さ」と効果的な「ガラス選び」

視線を遮る適切な「高さ」

窓の下端が、地面から1.8m以上の高さになるよう設計すると、外を歩く人の視線は大部分遮ることができます。
これは、平均的な身長の方の目線(約1.5m程度)よりも少し高い位置になるため、室内を覗き込まれる心配がほとんどなくなる、という考え方に基づいています。
この高さを意識するだけで、カーテン等が不要になるケースも少なくありません。
カーテンレールやブラインドがない暮らしは、コストを抑えられるだけでなく、スリット窓本来のすっきりとしたデザインを最大限に楽しむことができる、という大きなメリットがあります。

「型板ガラス(すりガラス)」の活用

設計段階で型板ガラスを選定しておけば、カーテンやブラインドを設置する必要がなくなり、コスト削減や、よりすっきりとした見た目の美しさ(意匠性)に繋がります。
透明ガラスとの価格差も、事前に確認しておくと良いでしょう。

【デザイン】内外観の印象を高める「配置」テクニック

外観のアクセント

スリット窓は、お家の「顔」である外観デザインの重要な要素になります。
同幅の窓を等間隔に配置して安定感や品格を出す、あるいは長さに変化をつけてリズミカルな表情を生むなど、その配置一つで、道行く人が思わず見上げるような、ご家族だけの特別な外観デザインを創り出すことができます。

空間の広がりを演出する効果

縦長のスリット窓は、人の視線を自然と上下に導くため、天井を高く見せる視覚効果が期待できます。
また、壁のコーナー部分(角)に設置すると、視線が外の景色へとすっと抜け、実際の帖数以上の開放感が生まれます。
配置一つで、暮らしの心地よさまで大きく変わってきます。
ぜひ設計士と一緒に、ご自身の住まいにスリット窓を採り入れたらどんな素敵な空間になるか、想像を膨らませてみてください。

関連記事:後悔しない家づくりの鉄則!失敗事例から学ぶ間取り・土地・資金・会社選びの成功術

 

吹き抜け階段に設置されたハイサイドライト(高窓)から光が差し込みプライバシーを守りながら採光する様子

【Q&A】スリット窓の気になる疑問にお答えします

最後に、お客様からよくいただくスリット窓に関するご質問をQ&A形式でまとめました。
断熱性や防犯性など、長く安心して暮らすために知っておきたい大切な情報です。

Q1. スリット窓は断熱性が低く、寒くなることはありませんか?

A. 高性能なガラスやサッシを選べば断熱性は十分に確保でき、寒くなる心配はほとんどありません。
たしかに窓は、壁に比べて熱の出入りが大きい部分です。しかし、近年の窓は断熱性能が飛躍的に向上しています。
「複層ガラス(ペアガラス)」や、より高性能な「トリプルガラス」、そして熱伝導率の低い「樹脂サッシ」などを選択することで、断熱性を高め、冬場の結露のリスクも大幅に低減できます。
性能と費用のバランスを、設計担当者としっかり相談して決めることが大切です。

Q2. 幅が狭い窓ですが、防犯面に問題はないでしょうか?

A. 人が通れない幅に設計すれば、大きな窓に比べて侵入リスクは低く、防犯性は高いと言えます。
ただし、より安心してお住まいいただくための対策を併せて検討することが重要です。
スリット窓は、人が侵入できないとされる幅(一般的に20cm~25cm以下)で設計することがほとんどです。
そのため、窓からの侵入という点では、大きな掃き出し窓などに比べて格段に安全性が高いと言えます。
しかし、どんな窓でもガラスを破壊して手だけを入れ、内側の鍵(サムターン)を開けられてしまうリスクはゼロではありません。
そのようなリスクに備えるため、

 

・ガラスの間に特殊な膜を挟んだ「防犯ガラス」を採用する
・工具などで回しにくい形状の「防犯サムターン」を選ぶ

 

といった対策を併せて行うことで、防犯性をさらに高めることができます。

関連記事:簡単にできる窓の防犯対策!泥棒や空き巣に狙われにくい家づくりのポイント

Q3. 掃除やメンテナンスの方法について教えてください。

A. 室内側は手軽にお掃除できますが、特に2階以上の外側は、設計段階でメンテナンス方法まで考えておくと入居後も安心です。
スリット窓の室内側は、幅が狭いぶん雑巾などでさっと拭きやすく、手軽にきれいにできるという利点があります。
一方で注意が必要なのが、開閉できないFIX窓の外側、特に2階以上の高い場所に設置した場合です。
ご自身で安全に掃除するのが難しいケースも多いため、

 

・足場を組まずに安全に掃除できる配置になっているか
・専門業者に依頼することも含めた、長期的なメンテナンス計画

 

などを、設計段階であらかじめ確認・相談しておくと良いでしょう。

関連記事:断熱効果の高い家とは? 気密性も高めて省エネで健康な暮らし

 

住宅の間取り図を見ながら、真剣な表情で工務店のスタッフに相談する若い夫婦

まとめ

今回は、スリット窓のカーテンの必要性から、設計段階で考慮すべきポイントまで幅広く解説いたしました。
スリット窓は、単なる採光のためだけの窓ではありません。
光の採り入れ方、プライバシーの確保、そして空間デザインに至るまで、設計の工夫次第で暮らしをより豊かに演出する、非常に魅力的な建材です。

 

「この場所には本当にカーテンが必要だろうか」「我が家のデザインには、どのような幅や配置が最適か」
このように、一つひとつの要素を丁寧に検討していくプロセスが、ご満足いただける住まいを実現する鍵となります。

もし、ご自身の家づくりにおいて、デザインと機能性を両立する最適なプランを専門家と一緒に考えたい、と思われた際には、どうぞお気軽にご相談ください。
皆様の理想の住まいづくりを、誠心誠意サポートさせていただきます。