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石膏ボードとは?壁材の特徴・メリット・デメリット・種類を徹底解説
石膏ボードとは、お家の壁や天井に最も広く使われている建材で、防火性や防音性に優れた下地材です。
新しいお家づくりを考え始めると、つい壁紙やインテリアに目が行きがちですが、その美しい仕上げを支えているのが石膏ボードです。
普段は表から見えない存在ですが、お家の快適性や安全性に直結する重要な役割を果たしています。
今回は、石膏ボードの基本的な知識から、メリット・デメリット、プロが現場でどう使い分けているかまで、お家づくりに役立つ情報を徹底解説します。
【この記事でわかること】
・石膏ボードの基本的な役割とお家での使われ方
・石膏ボードとプラスターボードの違い
・お家の暮らしを快適にする石膏ボードのメリット
・知っておきたい石膏ボードの性質と上手な付き合い方
・リビングや水まわりなど、場所ごとに使われる石膏ボードの種類と役割
目次
石膏ボードとは?お家の壁や天井に使われる身近な建材
石膏ボードとは、石膏を板状に固め、両面を厚紙で覆った建築材料のことです。
日本の住宅で広く使われ、壁紙や塗装の下地として欠かせない存在です。
お家の壁や天井の多くは、この石膏ボードを下地にして、その上から壁紙(クロス)を貼ったり塗装をしたりして仕上げられています。
コストパフォーマンスに優れ、加工もしやすいため、住宅建築でよく選ばれる壁材の一つです。
見た目には表れませんが、安心で快適な暮らしに欠かせない性能を支える、とても大切な役割を担っています。
石膏(せっこう)とは?
石膏は、天然に産出する硫酸カルシウムを主成分とする鉱物です。
美術のデッサンで使う像や、学校のチョーク、医療用のギプスなど、私たちの身近なところで古くから利用されてきました。
また、食品添加物として豆腐の凝固剤に使われるなど、安全性の高い素材としても知られています。
この石膏に熱を加えると水分が失われ、水を加えると再び固まるという性質を活かして、建材としての石膏ボードが作られています。
関連情報:杉と桧、建材に選ぶならどっち?特徴・メリット・デメリットを徹底比較

暮らしを支える石膏ボードの4大メリット
石膏ボードの強みは、耐火性・遮音性・施工性・コストのバランスにあります。
これらの性質によって、お家での暮らしを快適で安心なものにする、たくさんのメリットが生まれます。
一方で、採用する上で知っておきたいポイントもありますので、それぞれを詳しく見ていきましょう。
お家を守る優れた耐火性
石膏ボードが持つ最大のメリットの一つが、高い耐火性です。
石膏ボードの芯材である石膏には、結晶水と呼ばれる水分が約20%含まれています。
火災が発生して高温にさらされると、この水分が熱分解を起こして水蒸気となり、温度の上昇を遅らせる働きをします。
この性質により、万が一の火災の際に、壁の向こう側へ火が燃え広がることを防いでくれます。
この性能は、国が定める建築基準法において、燃えにくい建材である「不燃材料」として認定されています。
そのため、法律で定められた防火基準を高いレベルで満たすことができ、万が一の火災の際に炎の拡大を遅らせる重要な役割を担っています。
高い防音・遮音性で快適な住環境
石膏ボードは、音を伝えにくい性質も持っています。
素材自体に密度があるため、外部の騒音がお部屋の中に入ってくるのを和らげたり、お部屋の中の生活音(テレビの音や話し声など)が外に漏れるのを軽減したりする効果が期待できます。
特に、石膏ボードを2枚重ねて張る「二重張り(ダブル張り)」にすることで、遮音性能をさらに高めることができます。
静かな環境が求められる寝室や、音を気にせず楽しみたいシアタールーム、楽器を演奏するお部屋などにおすすめです。
加工のしやすさとコストパフォーマンス
石膏ボードはカッターナイフで簡単に切断できるほど加工がしやすく、現場での施工性に優れています。
そのため、工期を短縮できるというメリットにもつながります。
また、材料そのものが非常にリーズナブルで、安定して供給されているため、建築コストを抑えながらも高品質な壁を作ることが可能です。
お家づくり全体の予算を考える上でも、石膏ボードはとても心強い存在と言えるでしょう。
室内の湿度を調整するうれしい働き
石膏ボードの芯材である石膏には、目に見えないほどの小さな穴がたくさん空いています。
この構造のおかげで、お部屋の湿度が高いときには湿気を吸収し、逆に乾燥しているときには蓄えていた湿気を放出するという、まるで呼吸するような働き(調湿性)があります。
この働きにより、室内の湿度をゆるやかに整え、結露の発生を抑える一助となります。
快適な空気環境づくりを、さりげなく支えてくれる存在です。
関連情報:木は燃えやすいは大きな誤解!木造住宅が実は“火事に強い”科学的理由と5つの快適性能

石膏ボードのデメリットと注意点、上手な付き合い方
たくさんのメリットがある石膏ボードですが、万能というわけではありません。
性質を理解して、少し工夫することで、より長く快適に暮らすことができます。
ここでは、知っておきたい注意点と、その上手な付き合い方をご紹介します。
釘やネジの固定には工夫が必要
石膏ボードそのものに、重いものを支えるための釘やネジを直接打ち込むことはできません。
芯材の石膏が脆いため、ネジがしっかりと効かずに抜けてしまうことがあります。
【上手な付き合い方】
将来的にエアコンや本棚、手すりなどを取り付ける場所が決まっている場合は、設計段階でその壁の内部に「下地補強」をすることが必要です。
また、軽いものであれば「ボードアンカー」という専用の金具を使うことで、ポスターや時計などを飾ることができます。
強い衝撃には配慮が必要
石膏ボードは面での圧力には強いですが、一点に集中する強い衝撃を受けると、表面がへこんだり穴が開いたりすることがあります。
【上手な付き合い方】
人の出入りが多く、物がぶつかりやすい廊下や、お子様が元気いっぱいに過ごすお部屋などには、標準品よりも強度を高めた「強化石膏ボード」という種類を採用することがおすすめです。
水や湿気が多い場所では種類を選ぶ
標準的な石膏ボードは、長時間水に濡れたり、常に高い湿度にさらされたりする環境は得意ではありません。
強度低下やカビの原因になることがあります。
【上手な付き合い方】
キッチンや洗面所、トイレといった水まわりには、耐水・防カビ加工が施された「耐水石膏ボード」という専用の種類が使われます。
これにより、湿気による劣化を防ぎ、お家を長持ちさせることができます。
リフォーム時の廃棄は専門業者へ
石膏ボードは産業廃棄物にあたるため、一般の家庭ごみとして出すことはできません。
これは、主成分の石膏が埋め立てられた際に、特定の条件下で硫化水素というガスを発生させる可能性があるためです。
【上手な付き合い方】
将来的にリフォームや解体を行う際は、必ず専門の解体業者や産業廃棄物処理業者に依頼することになります。
適切に処理をすれば、リサイクルも可能な環境にやさしい建材です。
関連情報:知らないと後悔する木造住宅の湿気対策!プロが教える結露、カビを防いで家の寿命を延ばす方法

石膏ボードの種類一覧と場所ごとの使い分け
お家づくりでは、建築のプロがその場所の特性に合わせて、最適な種類の石膏ボードを使い分けています。
お施主様が直接選ぶ機会は少ないかもしれませんが、「なぜこの場所にはこの種類が使われるのか」を知っておくと、お家への理解が深まり、打ち合わせもスムーズに進みます。
石膏ボードの主な種類一覧
お家づくりでよく使われる石膏ボードの種類と、その役割を場所とともにご紹介します。
| 種類 | 主な厚み | 主用途 | 想定空間 | 選び方の目安 |
| 標準(一般) | 12.5mm | 下地の基本 | リビング・寝室・廊下 | 迷ったら基本はこれ |
| 耐水 | 12.5mm | 湿気対策 | キッチン・洗面・トイレ | 水・湿気が多い空間に |
| 強化 | 12.5 / 15mm | 衝撃・荷重 | 子ども部屋・廊下・手すり壁 | 棚/手すり予定がある壁に |
| 不燃 | 12.5 / 15mm | 追加耐火 | コンロ周り・防火区画 | 法規/安全性を重視する場所に |
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石膏ボードに関するよくあるQ&A
ここでは、お家づくりを進める中でよく出てくる石膏ボードに関する疑問に、Q&A形式でお答えします。
Q1. 「石膏ボード」と「プラスターボード」は違うものですか?
A1. 基本的に「同じもの」を指しています。
「プラスターボード」は石膏ボードの英語名(Plaster Board)です。
日本ではJIS規格(日本産業規格)で「せっこうボード」が正式名称とされているため、建築の現場では「石膏ボード」と呼ばれるのが一般的です。
呼び方が違うだけで指している建材は同じです。
Q2. 石膏ボードの厚みはどれくらいですか?
A2. 住宅で主に使われる厚みは「9.5mm」「12.5mm」「15mm」の3種類です。
現在の新築では、壁は12.5mmが主流で、天井は12.5mmまたは9.5mmを用いるケースがあります。
厚みがあるほど、耐火性・遮音性・強度が高まりやすく、安心感につながります。
Q3. アスベスト(石綿)が使われていないか心配です。
A3. ご安心ください。現在、日本国内で製造・販売されている石膏ボードには、アスベスト(石綿)は一切含まれていません。
アスベスト含有の建材は、2006年9月1日以降は製造、輸入、使用などが全面的に禁止されています。
これから建てる新しいお家で使われる石膏ボードは、すべてアスベストフリーです。

まとめ
石膏ボードとは、日本の住宅で最も広く使われている壁材で、防火性・防音性・調湿性といった性能を持つ建材です。
普段は壁紙や塗装の下地として隠れていますが、お家の快適性や安心を支える重要な役割を果たしています。
メリットとデメリットを正しく理解し、場所に合った種類を選ぶことで、より住みやすいお家づくりにつながります。
具体的な間取りや設備計画に合わせた「下地の選び方」や「補強の位置決め」などもご案内できますので、迷われた際はお気軽にご相談ください。
