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全館空調は初期費用も電気代も高い?維持費まで含めたトータルコストと後悔しない省エネ運用術
一年中、家のどこにいてもホテルのような快適な温度で過ごせる「全館空調」。
新築の家づくりを考え始めたとき、一度は憧れたことがある、という方も多いのではないでしょうか。
しかし、導入を検討する際にどうしても立ちはだかるのが**「コストの壁」**です。
「導入するだけで数百万円かかると聞いた」「初期費用が高い上に、毎月の電気代まで高額になったらどうしよう」といった不安から、採用を迷われている方も少なくありません。
全館空調システムは、単に贅沢な設備というわけではなく、ご家族の健康を守り、家の資産価値を高めるための投資です。
しかし、そこには必ず「適正なコスト感覚」と「正しい家のつくり方」が必要です。
今回は、全館空調システムの仕組みや初期費用と電気代のリアルな実態、そして後悔しないために知っておきたい省エネ運用のコツについて、詳しく解説していきます。
【この記事のポイント】
・全館空調システムは初期費用が高いと言われますが、比較の仕方次第で見え方は変わります。
・電気代は「全館空調だから高い」のではなく、家の性能によって大きく左右されます。
・実は「24時間つけっぱなし」の方が、電気代を抑えやすいケースもあります。
・大切なことは、コストだけでなく、健康や快適さも含めて判断する視点です。
目次
全館空調のコストは本当に高い?初期費用と電気代のリアル
「全館空調は高い」というイメージは定着していますが、具体的に何がどれくらいかかるのか、個別エアコンと比べてどうなのかを詳しく分解して考える機会は意外と少ないものです。
まずは、お金にまつわる不安を解消するために、コストの構造を紐解いていきましょう。
初期費用(イニシャルコスト)の相場と内訳
全館空調システムを導入するための初期費用は、メーカーやシステムの種類、建物の大きさ(延床面積)によって大きく異なりますが、一般的には200万円〜300万円程度が相場と言われています。
この数字だけを見ると、「エアコンに300万円?」と驚かれる方も多いと思います。
しかし、単純な金額比較をする前に、全館空調システムと個別エアコン、それぞれの費用の「中身」を正しく理解しておくことが大切です。
1. 全館空調の費用に含まれるもの
全館空調システムの費用には、空調機本体だけでなく、各部屋へ空気を送るダクト工事費、第一種換気システム(熱交換換気)の機器・設置費が含まれています。
つまり、**「冷暖房」と「高性能な換気システム」**がセットになったパッケージ価格といえます。
2. 個別エアコンで比較すべき費用
一方、個別エアコン(壁掛け)を選ぶ場合、エアコン本体代とは別に、法律で義務付けられている「24時間換気システム」の費用が建築費として計上されます。
公平に比較するためには、「エアコン機器 + 換気システム」の合計金額で考える必要があります。
また、エアコンの台数についても考慮が必要です。
かつての家づくりでは「各部屋に1台(計5台前後)」が当たり前でしたが、最近の高気密・高断熱住宅であれば、設計の工夫次第でエアコン1〜2台で家全体を冷暖房することも十分可能です。
結論としてのコスト比較
これらを踏まえて比較すると、コスト面では以下のような傾向になります。
・初期費用を抑えたいなら「個別エアコン」
少ない台数のエアコンと、標準的な換気システム(第三種換気など)を組み合わせれば、全館空調システムよりも初期費用は確実に安く抑えられます。
「設備にお金をかけすぎず、その分を内装や家具に回したい」という方には合理的な選択です。
・初期投資をしてでも環境を買うなら「全館空調」
初期費用は高くなる傾向にありますが、その対価として「室内機・室外機のないスッキリしたデザイン」や「家中の温度差が少なく、常にフィルターで浄化された良質な空気環境」が手に入ります。
「毎日の快適さと健康的な空気、そして空間の美しさを重視したい」という方にとっては、十分に価値のある選択となります。
どちらが正解ということはありません。
ご予算はもちろんですが、ご家族が「コストの安さ」と「住環境の質(温度・空気・デザイン)」のどちらをより重視されるかで検討してみてください。
気になる月々の電気代(ランニングコスト)
次に、住み始めてから毎月かかる電気代についてです。
30坪〜35坪程度の一般的な住宅で、「全館空調システム」と「個別エアコン(高気密高断熱住宅で2台稼働想定)」の電気代目安を比較してみましょう。
・春・秋(中間期):差はほとんどなし
全館空調:月額 2,000円〜4,000円
個別エアコン:月額 2,000円〜3,000円
・夏(冷房ピーク):差額 2,000〜3,000円程度
全館空調:月額 6,000円〜10,000円
個別エアコン:月額 4,000円〜7,000円
・冬(暖房ピーク):差額 4,000〜5,000円程度
全館空調:月額 12,000円〜20,000円
個別エアコン:月額 8,000円〜15,000円
※本記事の電気代目安は、以下の条件を想定しています
延床面積:30〜35坪
住宅性能:UA値0.46〜0.6(ZEH以上)/C値1.0以下
地域区分:関東〜中部エリア(6地域相当)
家族構成:3〜4人
運転方法:24時間連続運転を基本とした場合
人がいる場所を中心に冷暖房する個別エアコン運用に比べ、誰もいない廊下やトイレまで含めて家全体を一定の温度に保つため、全館空調システムの方が、月々の電気代は数千円ほど高くなるケースもあります。
しかし、ここで考えていただきたいのは「その差額で何を買っているか」です。
今の高性能な住宅であれば、個別エアコンでも昔の家のような激しい温度差は生まれません。
それでも、ドアを閉め切った個室や、換気口(給気口)の近くでは、どうしてもわずかな温度ムラや冷気を感じてしまうことがあります。
特に、コストを抑えるために「第三種換気」を採用している場合、冬の冷たい外気や花粉がそのまま入ってきてしまう点は避けられません。
全館空調システムで高くなる数千円は、こうしたわずかな不快感さえも解消し、「家中の温度が完全に均一な心地よさ」と、高性能フィルターを通した「花粉やホコリの少ない上質な空気環境」を手に入れるためのコストと言えるのではないでしょうか。
「24時間つけっぱなし」の方が安い理由
「電気代がもったいないから、出かける時はスイッチを切ろう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、高気密・高断熱な住宅、特に全館空調システムにおいては24時間つけっぱなしにする方が、結果的に効率的で省エネになるケースがほとんどです。
エアコンなどの空調機器が最も多くの電力を使うのは、「設定温度まで一気に室温を上げたり下げたりする時(起動時)」です。
一度快適な温度になった後は、その温度を維持するための電力はそれほど大きくありません(巡航運転)。
こまめにスイッチを切ってしまうと、帰宅して再度スイッチを入れた時に、冷え切った(あるいは暖まった)家全体の壁や床、天井まで含めて再度適温にするために、フルパワーで運転することになります。
特に全館空調システムは家全体の空気をコントロールしているため、一度室温が崩れてしまうと、元の快適な状態に戻すのに多くのエネルギーと時間を必要とします。
建物自体の「保温・保冷効果(蓄熱)」をうまく利用し、弱い力で運転し続けることが、電気代を抑えるコツです。
・全館空調のコストと運用の要点
初期費用:個別エアコン+標準換気よりは高くなるが、高性能換気システム込みの価格。
電気代:エアコン1〜2台運用よりやや高くなる傾向だが、家全体の快適さを買う費用と考える。
運用:24時間運転が基本。ON/OFFを繰り返すと非効率になりやすい。
関連記事:第一種?第三種?住宅性能に合った換気システムの選び方【新築戸建て】

全館空調を採用して後悔しないためのメリット・デメリット
コスト面でのハードルがある全館空調システムですが、それでも多くの方が採用するには理由があります。
しかし、メリットばかりを見て導入すると「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。
ここでは、暮らしの質に関わるメリットと、事前に対策すべき注意点をご紹介します。
家族の健康と安全を守る「温度のバリアフリー化」
全館空調システムの最大のメリットは、家中の温度差をなくすことによる健康効果と、生活の質の向上です。
先ほど触れた「コストの差額」は、まさにこの「家族の健康リスクを最小限に抑える安心感」と「理想の暮らし」を得るための投資といえます。
具体的な3つのメリットを見てみましょう。
1. ヒートショックのリスク軽減
冬場、暖かいリビングから寒いお風呂場やトイレに移動した際、急激な温度変化によって血圧が乱高下し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす「ヒートショック」。
全館空調システムは、家中の温度差を限りなく小さくできるため、このリスクを軽減するのに非常に有効です。
特に、ご高齢の方や高血圧などの持病がある方、まだ体温調節が苦手な小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、何物にも代えがたい安心材料となります。
2. 花粉・ホコリの少ない空気環境と掃除のしやすさ
全館空調システムには高性能なフィルターが搭載されていることが多く、外から入ってくる花粉やPM2.5を大幅にカットしてくれます。
常にきれいな空気が循環しているため、花粉症やアレルギーをお持ちのご家族にとっては、家の中が「避難場所」のような快適な空間になります。
また、24時間換気によって空気中のホコリがフィルターへ吸い込まれていくため、「棚や床にホコリが積もりにくく、日々の掃除が楽になった」という声も多く聞かれます。
もちろん全館空調システム自体のフィルター掃除は必要ですが、家全体の掃除の手間が減るのは大きなメリットです。
3. 吹き抜けやリビング階段も寒くない「間取りの自由度」
「リビングに大きな吹き抜けが欲しい」「開放的なリビング階段にしたい」と思っても、個別エアコンの場合、「暖房が効きにくく寒いから」という理由で諦めたり、扉をつけて閉鎖的になったりすることがあります。
全館空調システムなら、家全体を暖めるため、こうした大空間の間取りを採用しても寒さを感じることがありません。
初期費用のパートで触れた「スッキリしたデザイン」に加え、「諦めたくない理想の間取り」を実現できる点も、全館空調を選ぶ大きな理由の一つです。
導入前に知っておくべきリスクと注意点
一方で、全館空調システムならではの悩みもあります。
これらを知った上で対策を講じれば、後悔を防ぐことができます。
1. 乾燥対策は必須項目
全館空調システムの家で最もよく聞かれるお悩みが「乾燥」です。
冬場、家中の空気を暖め続けることで、湿度が下がりやすくなります。
乾燥しすぎると、肌荒れやウイルスの活性化につながるため、加湿対策は必須といえます。
最近では加湿機能付きの全館空調システムもありますが、加湿器を併用したり、部屋干しを活用したりする工夫が必要になる場合があります。
逆に言えば、部屋干しの洗濯物が驚くほどよく乾くというメリットにもなります。
2. 故障時のリスク(空調ストップ)への備え
「もし真夏や真冬に全館空調システムが壊れたら、家中の空調が止まってしまうのでは?」という不安もよく耳にします。
確かに、空調機が1台のシステムの場合、故障すると全てがストップするリスクはあります。
これに備えるためには、以下の対策を考えておくと安心です。
・アフターサービスの充実したメーカーや工務店を選ぶ:故障時にすぐに駆けつけてくれる体制があるか確認しましょう。
・予備の暖房器具を持つ:扇風機やヒーターなどは処分せずに持っておくと安心です。
・リビングにエアコン用コンセントだけ設置する:万が一の際に、後付けでエアコンを設置できるように、専用コンセントとスリーブ(配管穴)の準備だけしておく方法もあります。
3. 将来のメンテナンス・交換費用
機械である以上、いつかは故障や寿命が訪れます。
全館空調システムの機器の寿命は、一般的なエアコンと同様に10年〜15年程度と言われています。
交換費用はシステムやメーカーによりますが、本体と工事費を合わせて100万円〜200万円程度かかる場合が多いようです。
「15年後に100万円」と聞くと負担に感じますが、個別エアコン数台と24時間換気システムのユニットを一度に全て買い替える費用と比較すると、極端な差が出ないこともあります。
重要なのは、「いつか必ず交換時期が来る」ことを認識し、毎月数千円ずつでも修繕費として積み立てておく計画を立てておくことです。
関連記事:リビングに吹き抜けをつくるメリットとは?後悔しないための設計ポイントを徹底解説

電気代を抑えて快適に暮らす省エネ運用術と家づくりの条件
初期費用や電気代を抑えつつ、全館空調システムのメリットを最大限に活かすためには、ただシステムを導入するだけでは不十分です。
「家の器(うつわ)」である建物自体の性能が非常に重要になってきます。
ここでは、省エネで後悔しないための具体的なポイントを解説します。
家の性能(UA値・C値)がコストを決める
どれだけ高性能な全館空調システムを入れても、家に隙間があったり、断熱性能が低かったりすれば、せっかく暖めた(冷やした)空気は外に逃げてしまいます。
これでは、穴の開いたバケツに水を注ぎ続けるようなもので、電気代は高くなる一方です。
全館空調システムを採用するなら、高気密・高断熱な家づくりが大前提となります。
高気密・高断熱だと電気代が下がる理由
住宅の断熱性能を表す「UA値」と、気密性能を表す「C値」。
全館空調システムを導入する際は、これらの数値にこだわっている工務店を選ぶことが成功への近道です。
魔法瓶をイメージしてください。
魔法瓶(高断熱な家)にお湯を入れれば、長時間温かさが持続します。
しかし、もしその魔法瓶のフタが緩んでいたら(低気密な家)、そこから熱が逃げて中身は冷めてしまいます。
逆に、フタがしっかり閉まっていても、容器自体が薄いプラスチック(低断熱な家)であれば、外気の影響ですぐに冷めてしまいます。
つまり、「断熱」と「気密」のどちらか一方でも欠けていると、逃げた熱を補うために常にフルパワーで運転し続けなければならず、電気代がかさんでしまうのです。
両方の性能を高めることで初めて、全館空調システムは「最小限のエネルギー」で「最大限の快適さ」を発揮できるようになります。
システム選びと同じくらい、あるいはそれ以上に「器(うつわ)としての家の性能」が重要だということを覚えておいてください。
💡家づくりミニ知識:UA値とC値とは?
UA値(外皮平均熱貫流率):熱の逃げやすさを表す数値。小さいほど断熱性が高く、魔法瓶に近い家になります。全館空調システムを導入するなら、ZEH基準相当の0.6以下、できれば0.46以下(HEAT20 G2グレード相当)を目指すと安心です。
C値(相当隙間面積):家の隙間の大きさを表す数値。小さいほど隙間が少なく、冷暖房効率が上がります。全館空調システムならC値1.0以下(できれば0.5以下)が望ましいとされています。
太陽光発電との組み合わせで「自給自足」
電気代を物理的に抑える最も効果的な方法は、太陽光発電システムを導入して、自宅で使う電気を自給自足することです。
特に全館空調システムは日中も稼働し続けるため、太陽が出ている間に発電した電気をそのまま空調に充てることができ、非常に相性が良いのです。
初期費用はかかりますが、長期的なランニングコストをシミュレーションすると、トータルでお得になるケースが多く見られます。
電気代の高騰リスクへの備えとしても有効です。
関連記事:高気密・高断熱を表すUA値・Q値・C値とは?知っておきたい性能数値と健康な暮らし

全館空調システムに関するよくある質問【Q&A】
最後に、全館空調システムを検討されているお客様からよくいただく、コストや運用に関するご質問にお答えします。
Q. 部屋ごとに温度を変えられないのは不便ではありませんか?
A. 最近のシステムでは、ある程度の風量調整が可能です。
基本的に全館空調システムは家全体を均一な温度に保つものですが、各部屋の吹き出し口で風量を調整することで、多少の温度差をつけることは可能です。
例えば、夏場であれば、暑がりの方の部屋は風量を多くして涼しくし、使わない部屋は弱めたりといった、ご家族の好みや状況に合わせた微調整です。
ただし、個別エアコンのように「この部屋だけ28℃、あの部屋は18℃」といった極端な設定は苦手です。
家族間で体感温度の違いが大きい場合は、服装で調整したり、サーキュレーターを活用したりすることをおすすめします。
Q. 故障したら家中の空調が止まってしまいますか?
A. はい、1台の機器で管理している場合、故障すると家全体の空調がストップする可能性があります。
そのため、記事の途中でも触れましたが、**「アフター対応の早い工務店を選ぶこと」**が何より重要です。
また、万が一に備えて扇風機やヒーターなどの補助器具は捨てずに持っておくことや、設計段階でリビングに予備エアコン用のコンセントだけ準備しておくといった「保険」をかけておくと安心です。
Q. ペットを飼っている家庭にも全館空調はおすすめ?
A. はい、ペットと暮らす家庭には特におすすめです。
犬や猫は人間よりも体温調節が苦手なことが多く、特に夏場の熱中症対策として室温管理が必須です。
全館空調システムなら、留守番中も家全体が適切な温度に保たれるため、ペットが自由に移動しても安心です。
また、換気システムによってペットの臭いがこもりにくくなるというメリットもあります。
関連記事:熱交換換気システムで省エネ効果と一年中快適な暮らしを

まとめ
全館空調システムのコストは、ここまでお読みいただいた通り、単なる「高い・安い」だけで判断できるものではありません。
「導入の仕方」と「家の性能」次第で、その満足度と実際の負担額は大きく変わるからです。
確かに初期費用はかかりますが、その対価として得られるのは、ヒートショックのない安全性、花粉やホコリの少ないクリーンな空気、そして家中どこでも快適に過ごせるという、他には代えがたい「暮らしの質」です。
大切なのは、目先の金額だけで判断せず、30年、50年先のご家族の健康と、メンテナンスを含めたトータルコストで考えることです。
「全館空調が向いているかどうか」は、実は図面や性能バランスの段階で決まります。
単なる見積もりだけでなく、断熱・気密・間取りを踏まえたシミュレーションで、ご家族にとって現実的な選択肢かどうかを知りたい方は、お気軽にご相談ください。
私たち大栄建設と一緒に、後悔しない快適な住まいづくりを考えていきましょう。
