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2025.08.25
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住宅性能

正圧・負圧って何?窓を開けない換気で花粉・虫・カビを防ぐ家づくりの新常識

正圧・負圧って何?窓を開けない換気で花粉・虫・カビを防ぐ家づくりの新常識

「お部屋の空気を入れ替えたい。でも、花粉やPM2.5、虫が入ってくるのは絶対にイヤ…」
小さなお子さまやアレルギーをお持ちのご家族がいらっしゃるご家庭では、切実な悩みだと思います。
実は、そのお悩みを解決するカギが、お家の「換気」の仕組みにあります。
今回は、最近よく耳にする「正圧(せいあつ)」「負圧(ふあつ)」について徹底解説します。
言葉の基本的な意味から、それらが私たちの暮らしにどう影響するのか、そして窓を開けずにお家全体の空気をきれいに保つための家づくりの新常識まで、分かりやすくご紹介します。

 

【この記事でわかること】
・正圧・負圧の基本的な意味
・多くの住宅がなぜ「負圧」になり、花粉や虫が入りやすい環境になっているのか
・3つの換気方式「第一種・第二種・第三種」のメリット・デメリット
・正圧の力で、花粉・PM2.5・不快な虫の侵入を防ぐ仕組み
・心配される「壁内結露」を起こさずに、安全に正圧環境を保つ最新技術
・これからの高性能住宅に最適な換気システムの選び方

正圧・負圧ってどういう意味?暮らしと空気の関係

言葉の意味を身近なもので例えると?

「正圧」「負圧」と聞くと少し難しく感じますが、実は私たちの身近な現象で簡単にイメージできます。

正圧とは「風船」の状態

パンパンに膨らんだ風船の口を離すと、中の空気が外に勢いよく出ていきます。
これが「正圧」のイメージです。お家の中の気圧が外よりも高く、空気が常に中から外へ押し出されようとする状態を指します。
この仕組みは、清潔さが求められる病院の手術室や研究施設で活用されています。

負圧とは「ストローで吸う」状態

ストローでジュースを吸うと、口の中の圧力が下がり(負圧になり)、外のジュースが吸い込まれてきます。
これが「負圧」のイメージです。お家の中の気圧が外よりも低く、空気が外から中へ吸い込まれようとする状態です。
キッチンやお風呂の換気扇を強く回している時も、お家の中は負圧になっています。

要注意!ほとんどのお家は「負圧」になりやすい

実は、多くの住宅で採用されている「第三種換気」という方式は、ファンで強制的に排気し、給気は自然に任せる仕組みのため、室内が「負圧」になりがちです。
負圧の状態では、設計された給気口だけでなく、窓や壁のわずかな隙間からも外気がどんどん引き込まれてしまいます。
つまり、フィルターを通らない花粉やホコリ、PM2.5、虫などが建物内に直接入りやすく、気づかないうちに空気環境を悪化させてしまうことがあるのです。

関連情報:第一種?第三種?住宅性能に合った換気システムの選び方

 

窓を閉めたまま、きれいな空気のモダンなリビングで心地よさそうにくつろぐ若い日本人の家族

あなたのお家はどのタイプ?3つの換気方式メリット・デメリット

日本の住宅で採用されている「24時間換気システム」には、主に3つの方式があります。
それぞれの仕組みと、メリット・デメリットを知ることで、ご自宅の空気環境の課題が見えてくるかもしれません。

①第一種換気:省エネ住宅で採用される、快適・高効率な仕組み

仕組み:給気も排気も両方ファンで行います。その際、「熱交換」という技術で、捨てる空気の熱(冬は暖かさ、夏は涼しさ)を回収し、取り込む新鮮な空気に移します。
メリット:外気との温度差を和らげながら換気できるため、冷暖房のエネルギーロスを大幅に抑えられ、非常に省エネです。
デメリット:システム自体が高価で、家中に給気と排気のダクトを張り巡らせるため、設計も複雑になりがちです。また、給気ダクト内にホコリやカビが溜まると、そこを通った汚れた空気が全部屋に送られてしまうという衛生面の不安や、複雑なフィルターメンテナンスの手間が課題とされています。

②第二種換気:クリーンルームで採用される、清浄性を保つ仕組み

仕組み:ファンで強制的に給気し、排気口から自然に排気します。室内が「正圧」になるため、隙間からの汚れた空気の侵入を防ぎます。
メリット:病院の手術室や食品工場のクリーンルームで採用されるほど、非常にクリーンな環境を保てます。
デメリット:室内の湿気を含んだ空気が壁の中に押し出され、「壁内結露」を引き起こす大きなリスクがあります。これはお家の寿命を縮める致命的な欠陥につながる可能性があるため、一般の住宅での採用はほとんどありません。

③第三種換気:多くの住宅で採用される、シンプルな仕組み

仕組み:トイレや浴室のファンで強制的に排気し、給気口から自然に給気します。構造がシンプルでコストが安いため、多くの建売住宅やマンションで採用されています。
メリット:導入コストが安く、メンテナンスが簡単です。
デメリット:室内が「負圧」になりやすいため、壁などの隙間からフィルターを通らない花粉やPM2.5、冷たい外気が直接侵入しやすい点が最大の課題です。冷暖房の効率も悪化しがちです。

 

換気方式 仕組み(空気の流れ) メリット デメリット 主な採用例
第一種換気 給気・排気ともに機械 省エネ、快適(熱交換) コスト高、要メンテナンス 高性能住宅
第二種換気 機械で給気、自然に排気 清浄性が高い(正圧) 壁内結露のリスク大 手術室、工場
第三種換気 自然に給気、機械で排気 コスト安、構造が単純 負圧になりやすい、花粉侵入 一般的な住宅

 

現代の住宅の壁に設置された、スタイリッシュな24時間換気システムの給気口のクローズアップ

花粉・PM2.5・虫の侵入を防ぐ「正圧」のすごい効果

花粉やPM2.5はどこから入ってくる?

花粉やPM2.5などの有害物質は、開けた窓だけでなく、換気口や壁の隙間、玄関の開け閉めなど、さまざまな経路からお家の中に侵入してきます。
特にPM2.5は、粒径2.5マイクロメートル以下の非常に小さな粒子で、肺の奥深くまで入り込みやすく、呼吸器や循環器への健康リスクが指摘されています。

(出典)環境省「微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報

正圧環境では空気が“外へ向かう”から汚れが入りにくい

室内が正圧状態に保たれていると、空気は常に外へと流れようとするため、外気の汚れが中へ侵入することを押し返してくれます。
まるで、お家全体がバリアを張っているような状態です。
給気に高性能フィルターを組み合わせることで、PM2.5や花粉を効果的にシャットアウトし、室内に取り込む空気をクリーンに保てます。
お家の空気を「守る」という発想が、正圧換気の最大の特長です。

虫の侵入対策にも「正圧」が効果的

正圧換気は、不快な虫の侵入を防ぎたいというニーズにも応えられます。
特に蚊やチョウバエ、コバエなどの飛翔性昆虫は、空気の流れを嫌う習性があります。
室内の空気が外へ向かって流れている状態では、虫は侵入しづらくなるのです。
例えば、多くの住宅で起こりがちな「負圧」の状態では、空気の圧力が均等な時に比べて飛翔性昆虫の侵入が46%も増加するというデータがあります。
一方で、お家を「正圧」に保つことで、侵入を10%抑制できることも分かっています。
つまり、負圧と正圧とでは、虫の侵入しやすさに50%以上もの差が生まれるのです。

 

高性能な換気システムの清潔なフィルター。外気のホコリや排気ガスをブロックし、室内の空気をきれいに保っている。

正圧のメリットを最大化する、これからの家づくり

「正圧」のメリットは、ただ換気システムを導入するだけでは得られません。
「建物そのもの」と「換気の仕組み」が連携して初めて、その真価が発揮されるのです。
ここでは、理想の空気環境を実現するための3つの重要なポイントを解説します。

ポイント①【建物の性能】高い気密性(C値)が重要な基礎

まず、お家全体の隙間が少ない「高気密住宅(C値1.0以下が望ましい)」であることが、計画的な換気の重要な基礎となります。
なぜなら、建物に隙間が多いと、室内を正圧にしようとしても空気が漏れてしまい、安定した気圧コントロールが難しくなるからです。
「外気の汚れをブロックする」という正圧の基本性能は、高い気密性があってこそ安定して機能します。

関連情報:高気密・高断熱を表すUA値・Q値・C値とは?知っておきたい性能数値と健康な暮らし

ポイント②【換気の仕組み】熱交換で、快適性と省エネ性を両立

次に、第一種換気が得意とする「熱交換」の仕組みを組み合わせます。
これにより、換気で失われがちな室内の快適な温度(冬は暖かさ、夏は涼しさ)を保ちながらクリーンな空気を取り込めるため、ヒートショックのリスク軽減や冷暖房効率の向上に大きく貢献します。
高気密住宅の性能を活かす上でも、熱交換は非常に合理的な選択です。

関連情報:熱交換換気システムで省エネ効果と一年中快適な暮らしを

ポイント③【安全性の確保】壁内結露のリスクを限りなく低減する

そして、第二種換気の課題であった「壁内結露」のリスクを限りなく低減することも重要です。
これは、【ポイント①:高い気密性】によって湿気が壁体内に入り込む物理的な隙間を減らすと同時に、第一種換気の仕組みである「給排気双方の機械制御」によって過剰な圧力をかけないことで実現されます。
この安全性の追求こそが、現代の住宅で安心して正圧環境を導入するための大切な考え方です。

関連情報:内部結露とは?原因と危険性を知って防ぐための対策

これらの条件を満たす『気圧制御型一種熱交換システム』

ここまで見てきた「高い気密性との連携」「熱交換」「壁内結露リスクの低減」という3つの条件。
これらを高いレベルで満たすことを目指して開発されたのが『気圧制御型一種熱交換システム』です。
第一種換気をベースに正圧制御を行うこのシステムは、現代の高性能住宅が抱える換気の課題に対する、有力な解決策の一つと言えるでしょう。

 

冬の寒い日にもかかわらず、結露が一切なくクリアな住宅の窓。室内の快適な空気環境を象徴している。

正圧換気に関するQ&A

ここまで正圧換気のメリットをご紹介してきましたが、実際に導入するとなると、細かな疑問も出てくるかと思います。
ここでは、よくいただくご質問にお答えします。

Q1. 気圧の変化で頭痛がするけど、体に影響はないの?

A1. ご安心ください。お家を正圧に保つ際の圧力差は、わずか5~10パスカル(Pa)程度です。
これは、私たちがビルの1階から2階へ階段で上がる際に生じる気圧の変化よりもさらに小さいレベルです。
台風接近時など、自然界では一日で3,000パスカル以上も気圧が変動することがあります。
住宅の換気でコントロールする圧力は、こうした大きな気圧変動とは比べ物にならないほど微々たるもので、健康に影響を与える心配はまずないと考えてよいでしょう。

Q2. 24時間つけっぱなしだと、電気代が高くなるのでは?

A2. 換気システムは24時間365日稼働させることが基本ですが、最新の省エネモーター(DCモーター)を搭載した第一種熱交換換気の場合、月々の電気代は数百円程度です。
むしろ、熱交換機能によって冷暖房のエネルギーロスが大幅に削減されるため、お家全体の光熱費で考えると、結果的に節約につながるケースがほとんどです。
隙間風による無駄なエネルギー消費がなくなるメリットは非常に大きいと言えます。

Q3. 窓やドアを開けてたら、正圧の効果はなくなってしまうの?

A3. 一時的になくなりますが、全く問題ありません。
正圧換気の目的は、「窓を閉めている時間」の空気環境を良くすることです。
花粉の多い日や就寝中など、窓を閉めている時間の空気を清浄に保ち、ご家族の健康を守ります。
もちろん、気持ちの良い日には自由に窓を開けていただいて大丈夫です。
窓を閉めれば、システムが再び自動で室内を理想的な正圧状態に戻してくれます。

Q4. どんな家でも後から導入できるの?

A4. 新築時に導入するのが最も効果的ですが、大規模なリフォームやリノベーションの際に導入することも可能です。
ただし、正圧換気の効果を最大限に引き出すためには、お家全体の隙間を減らす「気密性能」が非常に重要になります。
お家の断熱性能や構造をきちんと診断した上で、最適なプランを検討する必要がありますので、まずは専門の知識を持った工務店や設計事務所にご相談いただくことをおすすめします。

 

きれいな空気環境が整った家で、ウッドデッキに面した窓を開け放ち、リラックスして過ごす若い夫婦

まとめ

空気の質を意識したお家づくりにおいて、「正圧・負圧」の考え方は非常に重要です。
単に空気を入れ替えるだけでなく、気圧差を活用して空気の流れを計画的にコントロールすることで、花粉や虫の侵入、結露やカビの発生といった多くの悩みを未然に防ぐことができます。
窓を開けずに、一年中クリーンで快適な暮らしを実現する正圧換気は、これからの住まいの新しいスタンダードとなる可能性を秘めています。
お家の空気環境に少しでも不安を感じている方は、ぜひこの「正圧換気」という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

今回ご紹介した『気圧制御型一種熱交換システム』による正圧換気は、私たち大栄建設の家づくりにて導入が可能です。
ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。